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しゃかいじひょう
社会時評
戸坂 潤
線上閱讀戸坂 潤《社会時評(しゃかいじひょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 195,408 字 · 380 頁
滝川教授が仮に復職すれば無論問題はすぐ様片づく筈だった。処が松井総長の妥協案なるものは、「滝川教授の処分は特別な場合なるを以て前例とせず、今後教授の進退は教授会の決議によって総長の具申を以て行う」というのである。滝川教授の場合を前例にされては耐らないが、之を特別な場合だと云って合理化している以上、いつでもその特別な場合が出て来るものと覚悟しなければならぬ。総長の具申云々は初めから当然で、之は「特別な場合」でない場合のことだから、特別な場合には総長の具申を俟たずにやるかも知れぬ、而も前例などに依らずにやるかも知れぬ、という文部省側の宣言がこの妥協案の意味ではないか。(特別な場合とは無論前例のない場合のことだ。)留任教授達がこの妥協案を見て留任する理由又は口実が見つかったと思ったのならば、余程のウスノロだと失礼ながら断言しなければならぬ。
一体、この妥協案で留任教授達は、どういう得をするか計算して見たのか。滝川教授が前例にならないことや総長の具申を必要とすることは、初めから当然なことで、何等事前よりも有利な条件ではないではないか。その代りに彼等は何を失ったか。