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かぐらざか

神楽坂

矢田 津世子

線上閱讀矢田 津世子《神楽坂(かぐらざか)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,611 字 · 40 頁

青空文庫

と宥められる。その「あとで」をあてにして次のお詣りに早速ねだると約束をけろりと忘れたおっ母さんは「また、あとでねえ」と宥めるように言うのである。そこでお初はしつっこくねだるようになる。人形屋の前でおっ母さんの袂へしがみついて離れないようになる。これにはおっ母さんも呆れたように笑って、渋りながらも帯の間から青皮の小さなガマ口を出して人形を買うてくれるのである。――

初めのうちは云い出し難かった爺さんへの無心も、いつの間にか子供の頃の慣しで容易になり、爺さんの方でも、つい負けて出してしまうという具合である。

爺さんに貰った幣を帯の間へ挟んで鏡台の前を立ったお初は梯子段のところまで行って、

「おっ母さん、お茶はまだですか」と呼ばわった。その声に釣られたようにおっ母さんが茶盆へ玉子煎餅の入った鉢と茶道具をのせて上ってきた。

「どうぞ、御ゆるりと」

敷居のところへ片手をついてこう辞儀をすると梯子段の降り口の唐紙をぴたりと閉めて下った。

おっ母さんの物腰には大むらの仲居をしていた頃の仕来りがぬけない。お初たちが茶のみ話をしているうちに、よく隣りの間へ夜のものをのべることがある。