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かみがみのびしょう
神神の微笑
線上閱讀芥川 竜之介《神神の微笑(かみがみのびしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,156 字 · 19 頁
あの幻にどんな意味があるか、それは彼にはのみこめなかった。しかしあの幻を見せたものが、泥烏須でない事だけは確かだった。
「この国の霊と戦うのは、……」
オルガンティノは歩きながら、思わずそっと独り語を洩らした。
「この国の霊と戦うのは、思ったよりもっと困難らしい。勝つか、それともまた負けるか、――」
するとその時彼の耳に、こう云う囁きを送るものがあった。
「負けですよ!」
オルガンティノは気味悪そうに、声のした方を透かして見た。が、そこには不相変、仄暗い薔薇や金雀花のほかに、人影らしいものも見えなかった。
× × ×
オルガンティノは翌日の夕も、南蛮寺の庭を歩いていた。しかし彼の碧眼には、どこか嬉しそうな色があった。それは今日一日の内に、日本の侍が三四人、奉教人の列にはいったからだった。
庭の橄欖や月桂は、ひっそりと夕闇に聳えていた。ただその沈黙が擾されるのは、寺の鳩が軒へ帰るらしい、中空の羽音よりほかはなかった。薔薇の匂、砂の湿り、――一切は翼のある天使たちが、「人の女子の美しきを見て、」妻を求めに降って来た、古代の日の暮のように平和だった。