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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁
と、桔梗様は袖を取った。涙で洗われていよいよ益※(二の字点、1-2-22)、可憐にも見え美しくも見える、桔梗様の顔が現われた。
「綺麗なお顔でございますこと」
黄金の杖を差し向けながら、華子は冷やかに云ったものである。
「左の眼から焼きましょうか。それとも右から焼きましょうか。ドカリと二つの真っ暗な穴が、顔へ出来るでございましょう。口があって鼻があって、そうして眼だけが二つながらない、どんなに変った面白い顔が出来上がることでございましょう」
杖の先を次第に近づけた。桔梗様は見詰めている。放心したような眼つきである。眼を放すことが出来なかった。黄金の杖に磁気があって、それが引きつけているように、眼を放すことが出来なかった。だが心ではハッキリと、こんなことを考えていた。
「妾は決して殺されはしまい。妾は怪我だってしないだろう。何も悪いことをしないのだから。冷泉華子という人は、冗談をしているのだろう。妾を嬲っているのだろう」
だがもし桔梗様が眼を上げて、華子の顔を一眼でも見たら、そういう考えは消えてしまったろう。
華子の顔は無表情であった。まるで事務的の顔であった。