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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

よし俺は探しに行く!」

年が返って新年になった。天保十一年一月十日、その晴れた日の早朝に、一式小一郎は屋敷を出た。

深編笠に裾縁野袴、柄袋をかけた蝋鞘の大小、スッキリとした旅装い、足を入れたは東海道で、剣侠旅へ出たのである。

「考えてみればあぶなっかしい旅さ」小一郎は心中可笑しくもあった。「たった一度だけ耳にした娘の声を手頼りにして、声の主を探しに行くのだからなあ」

長閑にボツボツ歩いて行く。

五

川崎の宿まで来た時である。

「お武家様え、お馬に召しませ」可愛らしい娘の声がした。

振り返った一式小一郎、見れば駄賃馬の手綱を取り、女馬子が立っていた。

「さようさな、乗ってもよい」

「これは有難う存じます。どこまでお供いたしましょう」

「そうさなあ、どこへ行こう」

「どこへでもお供いたします」

「さあてどこへ行ったものか、これ女馬子、どこへ行ったらよいな?」

「ホ、ホ、ホ、ホ」と笑ったが、「京大坂などいかさまのもので」

「ちと遠いな」と小一郎はこれも笑いながら考えたが、「これ女馬子、聞きたいことがある。土地高燥で半島で、木が茂っていて大きな池がある、そういう土地はあるまいかな?」