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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

田安家の勢が一ツ橋家の勢へ、どうやら挑戦したらしい。と左側の谷の上から、それに答える鬨の声がした。一ツ橋勢が応じたものと見える。

こうして二、三回鬨が上がったが、事件らしい事件も起こらなかった。

「面白いな」と小一郎。

「陽気でよろしゅうございます」

――で、三組の同勢は、先へ先へと進んで行く。目差すは同じ場所である。すなわち山尼の居場所である。

先へ先へと進んで行く。

だが先は続かなかった。

遙か向うに盆地が見え、そこに点々と幾個かの天幕が日を受けて白く見渡された。

それこそ山尼の部落である。

谷を作っている左右の山も、盆地に向かって傾斜をなし、盆地に到って尽きている。谷も盆地で尽きている。

で自然の勢いとして、田安家の勢も一ツ橋家の勢も、そうして君江も小一郎も、盆地で一緒にならなければなるまい。

そういう盆地の中央にある、一つの大きな天幕の中で、桔梗様と鯱丸とは話していた。

桔梗様を守護する山尼の徒が、十数人残っているばかりで、その他の無数の山尼達は、秩父の山にはいなかった。昆虫館をさして馳せ去ったのである。

「大変寂しくなりました」

こう云ったのは鯱丸である。