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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

それにしても何んの必要があって、自分をこんな山の中へ、山尼達は攫って来たのだろう? これからどうするつもりだろう? 一生人里へは返さずに、山の中へ止めて置くのだろうか?

これを思うと桔梗様は、不安で不安でならなかった。

しかし桔梗様のその不安は、一瞬の間に喜びとなった。

というのは盆地の外れにあたって、二派の武士達でも衝突したような、凄じい叫び声が忽然と起こり、太刀打ちの音が聞こえて来たかと思うと、その方角から馬に乗った武士が、女の馬子を後に従え、桔梗様の方へ走って来たが、天幕の前までやって来ると、ヒラリと馬から飛び下りた。

「おお桔梗様、いられたか!」

「まあ、あなたは小一郎様!」

「お助けに参った、さあさあ馬へ!」

――で、桔梗様を馬へ乗せ、君江を先立て一式小一郎は、一散に麓へ下ったからである。

しかしその時邪魔がはいった。いつの間に先に廻わっていたものか、南部集五郎が二、三人と共に、翻然木蔭から飛び出して、素早く行手を遮ったのである。

「やらぬぞ一式!」

切り込んで来た。

「集五郎か」

と太刀を抜いたが、股を一揮! 充分に切った。

「あっ」

という悲鳴! 集五郎だ。