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しんぴこんちゅうかん

神秘昆虫館

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《神秘昆虫館(しんぴこんちゅうかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 105,803 字 · 213 頁

青空文庫

そうしてそれは小一郎にとっては、決して不愉快ではないのであった。否々むしろ嬉しいのであった。

「何んと云っても風変りの娘さ。こんな娘と所帯を持ち、町家住居をやらかしたら、とんだ面白い日が暮らせるかもしれない」

そうはいっても小一郎には、桔梗様のことが忘れられなかった。「あの桔梗様の美しさは、いわば類稀れなるものだ。君江などとは比べものにはならない」とはいえ今に至っては、どうすることも出来なかった。「それにしてもどうして桔梗様は、この俺の恋を入れながら、この俺と一緒に来ようとはせず、昆虫館などへ残ったのだろう?」これがどうにも不平であった。「恋人の愛より親の愛の方が、魅力があったというものかな?」そうとしかとるより仕方なかった。「若い娘というものは、親の愛なんか蹴飛ばしても、愛人の方へ来るものだと、俺は今日まで思っていたが、どうもね、今度は失敗したよ」それが不服でならなかった。

にわかに小一郎は馬の上で、ク、ク、クッと笑い出してしまった。

「何んの馬鹿らしい、考えてみれば、せっかく昆虫館をさがし中てた結果、いったい何を得たかというに、あの『騎士よ』という言葉だけだったってものさ」