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こうせんぜんじのことども
禅堂生活
鈴木 大拙
線上閱讀鈴木 大拙《禅堂生活(こうせんぜんじのことども)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 27,634 字 · 57 頁
これに反して、老師は妙に気高いところがあった。貴族風と云うでもなく、また謹厳に堅まったでもなく、ただ何となく上品で、そうして慈愛の情に充ちたところがあった。上品と云う言葉は当らぬ、また自ら持するところが高いと云うのも未穏であろう。兎に角何だか一種人を魅する底の風格を具えて居られた。その人格より迸り出ずる一種の霊気とでも云うておこう。禅僧の洒落が下卑ると面白くないものである。そうしてこの面白くないのがかなりに多いと思うが、どうかしらん。
老師は愛の人であった、誠のある人であった。予の記憶に残って居るのはそれである。或る時、「そんなに毎日通信があってはお困りでしょう。代筆を侍者にお命じになったら、どの位手が省けるかしれません」と云うたら、老師は「時には実際そう思うこともある、又そうすることもないではないが、受信者の方から見ると、代書では不平であるだろうし、自分も何だか気がすまぬ。日本ではまだ西洋流に何でもかでもタイプライターでやるわけに行かぬ」と答えられた。予等への通信でも、単に日常の用で、御自身の筆でなくとも弁ずることを、矢張り自ら書かれた。時には侍者の筆もあったけれど。