輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

などとささやかれたのみだった。

越前ノ前

と、よぶよりは、尊氏にはやはり、藤夜叉とした方が、胸にせまるし、生きてもいる。

「なに、いなくなった?」

彼女の失踪と聞いたときの彼の驚きは、国家的な大変と、一家族との違いこそあるが、後醍醐のきみを掌から逃がした折よりも、もっと、あらわな苦痛を、おもてへにじみ出していた。

「ふらちな女だ」

と、言ってから、また次に。

「せっかく、不知哉丸を元服させて、直冬と名のらせ、錦小路殿(直義)の養子として据えたものを、なにが不足ぞ。すてておけ。行方などはさがすにおよばん」

事を、政治として扱うときの彼と、全然、私情でしかない場合の彼とは、まるで別人の観がある。だらしのないほど、一面はもろい。

しかし、このことに限っては、それきり藤夜叉の名も口にしなかった。――もっとも、時はすでに二月下旬で、越前の戦況が、朝に夕に、ひんぴんと聞え、それの早馬が入るたび、幕府の室町界隈は、わきかえっていたときでもある。

そして、三月に入ると、まもなく、

金ヶ崎落城

の報が、斯波高経と高ノ師泰との連名で、早打ちされてくるし、ひきつづいて、落城のさい、足利勢に捕われた後醍醐の皇太子恒良が、現地から都へ、押送されて来た。