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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

この無抵抗ぶりもまた、直義には意外だった。

こう、おとなしく命に服したものを、性急に武力的な拘束を加えることも出来ないし、それはまたかえって危険を呼ぶものとも考えられる。――徐々には、兄の尊氏にせまって、これまでの師直の罪科をかぞえ上げ、将来のためをも説いて、このさい彼を流罪に処すか、いっそのこと、死を賜うとして、切腹を命じるかの、いずれかの決断をせまるのを目的としてその方にもっぱら力をそそいでいたのである。

しかし、これがまた容易にらちはあかなかった。

尊氏がそれに「うん」という気色はどうも見取れない。そこで兄弟の複雑なもつれは、或る限界をおいて口に出さないまま、冷却の日をおくことを余儀なくしていた。――もし師直の罷免理由を、短気に兄へつきすすめてゆけば、勢い、それは直義対師直でなく、直義対尊氏の兄弟喧嘩とならないわけにゆかないのである。

そもそもは、尊氏が「諸政、何事も、弟のおまえに委せる」として来たものを、一面では自分の意志を師直に代行させて、二頭政治の弊をあえて深めてきたことが、およそこんどの重大原因であるからなのだ。「――兄の狡さよ」