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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁
深い御憂慮にはおよびませぬ」
以後の道誉は、義詮をたすけて、大いに兵力の挽回につとめた。義詮の執事は自然、彼となっていた。このあいだの義詮の生殺与奪は一に彼の手の中にあったといってよい。
が、ここに。
逃げるにも逃げえられず都におきのこされていた御一家がある。北朝の皇室だった。
そのご南朝方では、ただちに北朝の光厳、光明、崇光の三上皇と皇太子直仁とを、そっくり人質として八幡に囚え来って、三月早々、河内の東条へ移し、後にまた、賀名生の山中に連れて行ってしまった。
「はや、事は半ば成就した」
と、見たか、総帥の親房は、やがて自身、京都へ乗り込んでいた。そして第二だんの急務として、義詮の追討に全力をそそぎかけたが、時にもう近江の義詮は、早くもその軍力をあらたにして、逆に、京都に進撃してきた。
義詮がにわかに勢力をもち直した背後には、親の光というものがなくはない。尊氏が関東で勝った影響というべきだろう。京都を見下ろす東山のみねには、夜ごと兵のかがり火がふえていた。火の線は長楽寺、双林寺、阿弥陀ヶ峰の端までつらなり、四月に入ると、天を焦がすばかりになった。すべて近江から潜入した義詮の軍だった。