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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

といっても、北朝に本来の御威光はなく、幕府のうちの内訌も後を絶つふうでない。

たしかに、武力は強力になった。けれど諸国の武族は各※(二の字点、1-2-22)みなその郷国での地盤をかため、自信を蓄え、それが次に来る群雄割拠の萌芽を地表にあらわし始めていた。

尊氏はいぜん心の安まるひまはなかった。

幕府の内訌も、因をただせば、細川、畠山、斯波、今川、佐々木といったような功臣が、みな自力で割拠しうる力を持ってきたからである。若い義詮がこれをおさめるのは容易でない。手習の手を取って教えるように、尊氏は政治を教える。

けれど、ともすれば義詮自身がその渦中にまきこまれた。そしてしばしば、南朝方へ奔る者やら小反乱を内に見た。武家統一の幕府造成は、前途まだ遠い感だった。

しかし、それらのことはあったにしても、とにかく、

正平十一年(北方の延文元年)

正平十二年

の両年は、諸国とも静謐な方だった。

さきに南朝に囚われていた光厳法皇やほかの上皇親王たちも、五年ぶりで、解かれて京都へ還って来られた。が、ひとり光厳法皇だけは、伏見の寺へ入って、人にもお顔を見せられなかった。