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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁
「まず、頼春の子、細川頼之だろう……」と、言って「したが、まだ若すぎるな。そちの執事には」
と、尊氏は急に疲れ気味な色をみせて、自分から横になった。
尊氏が病間になずみ出したことも、初めは、ごく側近にしか知られていなかったが、月の半頃にはやがて外部にも洩れて、それは洛内じゅうの大きな関心事とならずにいなかった。
朝廷からは、典薬頭の和気、丹波の二家をさしむけられ、門前には見舞の公卿車もあとを絶たない。
諸山の寺院では祈祷がおこなわれ、邸内でも薬師十二神将の法とか、不動延命の修法とかを、日夜、勤めているのであろう。館の大廂からは護摩の煙が雲のように立ちのぼり、衆僧の振鈴や誦経が異様な喚叫をなして二条の町かどあたりまでも聞えてくるほどだった。
「眠たい」
尊氏は、そうした中心にある一室の厚いふとんの上にうめいていた。
体を横たえているのではなかった。横になれない症状なのである。胸の高さにまで折り畳んだ夜具に、両の肱と苦患の顔を乗せて、俯ッ伏せに凭れて坐ったきりな容だった。
はじめ、館の典医が、お風邪とかろく診たのは、まもなく、まったく誤診とわかった。
高熱はつづくばかりなので、医師も小首をかしげているうちに、病人は、自分の左の手を背へ廻して、やっと指がとどくあたりの肋骨裏にあたる部分の異常感を訴えだした。