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しほんたいへいき

私本太平記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 116,638 字 · 233 頁

青空文庫

とまれ彼の病後をなぐさめる一夕の招きとはこれが主眼であったらしい。

いらい師直の夜の“宮廻り”はだいぶ減った。

木像蟹の本来の眼は、暗黙のうちに、自己警戒を油断なくしだしていた。政務、厳令、いよいよ執事の職柄を把ってうごかぬものがみえる。

直義が自分にこころよくないことは前々から察知されていたことだ。しかし直義に気がねしていたら、尊氏の意志や命はおこなわれない。

また上杉や畠山が、直義へおもねって、自分を図ろうとするのも、その気もちは分らぬでもない。対等者の門の繁栄ぶりを見て、おだやかでいられないあの人間心理なのだ。とはいえ衆望とか権力とかいうものは、たれへもそう平等に満足を配分しない。寄るところへ片寄って来る。

「人間の相違、力の相違。また衆が見る魅力のちがいというものだ。それをやっかむなどは身のほどを知らず、何も、俺の知ったことではない」

師直は、嘯いた。

けれど内心は強固な警戒に鎧はぬぐわけにゆかなかった。――どれも将軍家一族のゆゆしい者が相手だし、僧の妙吉にしても、そのごの調べだと、軽くは見ていられなかった。直義を深く心服させているだけでなく、宮中にまで隠然たる勢力をもち、夢窓を追って、やがては天龍寺の主座に坐ろうとしている野望の怪僧かとも考えられた。