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かがくとぶんがく
科学と文学
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《科学と文学(かがくとぶんがく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,562 字 · 50 頁
そうして、その後三十余年の間に時おり手に触れた文学書の、数だけはあるいは相当にあるかもしれないが、自分の頭に深い強い印象を焼き付けたものと言ってはきわめて少数であるように思われる。日本の作家では夏目先生のものは別として国木田独歩、谷崎潤一郎、芥川竜之介、宇野浩二、その他数氏の作品の中の若干のもの、外国のものではトルストイ、ドストエフスキーのあるもの、チェホフの短編、近ごろ見たものでは、アーノルド・ベンネットやオルダス・ハクスレーの短編ぐらいなものである。
何ゆえに自分がここでこのような、読者にとってはなんの興味もない一私人の経験を長たらしく書き並べたかというと、これだけの前置きが、これから書こうとするきわめて特殊な、そうして狭隘で一面的な文学観を読者の審判の庭に供述する以前にあらかじめ提出しておくべき参考書類あるいは「予審調書」としてぜひとも必要と考えられるからである。
もう一つ断わっておかなければならないことは、自分がともかくも職業的に科学者であるということである。少年時代に上記のごときおとぎ文学や小説戯曲に読みふけっているかたわらで、昆虫の標本を集めたり植物葉を作ったり、ビールびんで水素を発生させ「歌う炎」