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ぬすむおんな

窃む女

黒島 伝治

線上閱讀黒島 伝治《窃む女(ぬすむおんな)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,734 字 · 18 頁

青空文庫

一束よう出さなんだら、半束ずつでも出さあ。」

「そうかい。」彼は笑った。

三

木代が、六十円ほどはいったが、年末節季の払いをすると、あと僅かしか残らなかった。予め心積りをしていた払いの外に紺屋や、樋直し、按摩賃、市公の日傭賃などが、だいぶいった。病気のせいで彼はよく肩が凝った。で、しょっちゅう按摩を呼んでいた。年末にツケを見ると、それだけでも、かなり嵩ばっていた。それに正月の用意もしなければならない。

自分の常着も一枚、お里は、ひそかにそう思っていたが、残り少ない金を見てがっかりした。清吉は、失望している妻が可愛そうになった。

「それだけ皆な残さずに使ってもえいぜ。また二月にでもなれゃ、なんとか金が這入っ来んこともあるまい。」と云った。

「えゝ。……」

声が曇って、彼女は下を向いたまゝ彼に顔を見せなかった。……

正月二日の初売出しに、お里は、十円握って、村の呉服屋へ反物を買いに行った。子供達は母の帰りを待っていたが、まもなく友達がさそいに来たので、遊びに行ってしまった。清吉は床に就いて寝ていた。

十時過ぎにお里が帰って来た。

「一寸、これだけ借りて来てみたん。