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かぜのまたさぶろう

童話集 風の又三郎

宮沢 賢治

線上閱讀宮沢 賢治《童話集 風の又三郎(かぜのまたさぶろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 55,657 字 · 113 頁

青空文庫

全くそのとおり、にわかに馬の通った跡は草の中でなくなってしまいました。

(ああ、悪くなった、悪くなった。)嘉助は胸をどきどきさせました。

草がからだを曲げて、パチパチ言ったり、さらさら鳴ったりしました。霧がことに滋くなって、着物はすっかりしめってしまいました。

嘉助は咽喉いっぱい叫びました。

「一郎、一郎、こっちさ来う。」ところがなんの返事も聞こえません。黒板から降る白墨の粉のような、暗い冷たい霧の粒が、そこら一面踊りまわり、あたりがにわかにシインとして、陰気に陰気になりました。草からは、もうしずくの音がポタリポタリと聞こえて来ます。

嘉助は、もう早く一郎たちの所へ戻ろうとして急いで引っ返しました。けれどもどうも、それは前に来た所とは違っていたようでした。第一、あざみがあんまりたくさんありましたし、それに草の底にさっきなかった岩かけが、たびたびころがっていました。そしてとうとう聞いたこともない大きな谷が、いきなり目の前に現われました。すすきがざわざわざわっと鳴り、向こうのほうは底知れずの谷のように、霧の中に消えているではありませんか。

風が来ると、すすきの穂は細いたくさんの手をいっぱいのばして、忙しく振って、