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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
線上閱讀菊池 寛《第二の接吻(だいにのせっぷん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 頁
恐ろしい苦痛が、少しもゆるむことなしに倭文子を、さいなんだ。彼女は、もし床にはいったら、偶然なねむりが、それを救ってくれやしないかと、九時前から、寝床をしいて、床についたが、いくら蒲団を頭からかぶっても、意識は水のようにすみ切って、すみ切った意識の中で、苦しみの刃が縦横に彼女の心をきりきざんでいた。
十時が、近づくにしたがって、彼女の苦しみは増した。両手でじっと胸をかかえ、何も考えまいとしてつとめればつとめるほど、いやなまぼろしが、ハッキリと頭の中に浮んで来る。
右をむいても左をむいても、ねむれなかった。目がさえてしまって、電灯を消した部屋の中までが、アリアリと眸にうつって来る。
苦しみの時間は容易に経たなかった。十時が来なければいいと思い、また早く来てしまった方がいいとも思っていたが、その十時は容易に鳴らなかった。ふと、廊下に面した障子が、スルスルと開いた。
「倭文子さん、お休みになったの。」
倭文子は、おどろいて床の中に起き上った。それは京子の声であった。
「いいえ。」
「ちょっと話があるの。電灯つけてもいいでしょう。」
倭文子は、ゾッとした。また京子が、何か恐ろしい話をするだろうと思ったからである。