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そこつひょうばんき
粗忽評判記
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《粗忽評判記(そこつひょうばんき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,942 字 · 28 頁
会釈しながら二人掛りで坐らせると、久之進は蒟蒻のようにぐたぐたとそこへ崩折れてしまった。このありさまを見て明敬も信継もあっと眼を瞠った。
「これは、なんとしたことだ」
「はっ、御配膳所へ見えまして酒をとのお頼みゆえ、係りの者がお相手にて差上げましたそうで、とうとうこのように……」
「どうしてまた、そんな」
刀を取りに行きながら何のために配膳所へ現われ、また何のために酒などをねだったのか訳が分らない、明敬は膝を打って、「久之進、面をあげい」と叫んだ、「そのありさまはなにごとだ、見苦しいぞ久之進」
「はっ、……お上、――」久之進はうっとりと酔眼を瞠いたが、「じつに、じつに申し訳なき、粗忽を仕りました、どうか、久之進めに切腹を仰付けのほど」
「いや切腹に限らぬ、次第によっては手討にもするぞ、訳を申せ!」
「申上げまする」久之進はがくりと平伏しながら「拙者め、腰の物を取りに、お控間へ参るつもりで、お廊下へ出ましたので、……ずんずん参りました、……ずんずん歩いて参りましたが、計略のあるお廊下とみえまして、どっちへ参っても奇天烈なところへ出るばかり、一向にらちがあかず、……さりとて街中ではなし改めて道を訊ねるというのもお上の御威光に関わることゆえ、じつに迷惑に存じていますと、つい御配膳所と思われますところへ出てしまいました。