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せいしんびょうおぼえがき
精神病覚え書
線上閱讀坂口 安吾《精神病覚え書(せいしんびょうおぼえがき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,027 字 · 18 頁
かと思った。
一般に、犯罪者と精神鑑定とは離るべからざるように見られているが、テンカンの場合とか、異状発作の場合とかはとにかくとして、たとえば小平の場合などは、これを精神異状と云うのは奇妙であり、明らかに、「犯罪者」という別の定義があるべきではないかと思った。一般に、精神病の患者は、自らに科するに酷であり、むしろ過度に抑圧的であって、小平のような平凡さ、動物的な当然さはないものである。精神病者が最も多く闘っているものは、むしろ自らの動物性に対してであり、僕が小平を精神異状ではなく、むしろ平凡であり、単に犯罪者であると定義する所以はこゝにあるのである。精神病院の患者は自らに科するに酷であり、むしろ一般人よりも犯罪に縁が遠い、と僕は思った。
精神病というものは、家庭とか、就職先とか、それらのマサツがなければ生じないもので、又、自らに課する戒律がなければ生じないものである。だから、責任ある地位につき、自らに課するに厳なる社会人は概ね精神病者と断定してよろしく、小平のようなのが、むしろ普通人の形態に近似しているのである。
僕が見た外来患者のうちで、僕の応接間で見かけることのない唯一のタイプの患者は、四十七の女であった。