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ふんにょうたん

糞尿譚

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 頁

青空文庫

たことが用を為さないため、リヤカアも二つ作り、桶も八十荷作り、汲取人夫は六人もよけい雇い入れた。其の外、色々の事業の面倒な経緯は省略するとして、彼が商売を始めてから十年間に、先祖から残されて来た山林田畠はもとより、家屋敷まで悉く人手にわたり、あるものとては、ただ、今に見て居れ、という彦太郎の執念ばかりとなった。トラックも幾度か抵当に入り、幾度か差押えの厄に遭った。彼がひたすら失敗と没落の道をたどって行ったのには、他の重要な原因として、彼がなかなかの酒好きであったことがひとつ、もう一つには、この地方が非常に政治的にうるさいところで、政党政派の関係があらゆる商売取引に浸潤し、政党への顧慮なくしてはいかなる商売も成立しなかったことが、ひとつである。彼は村にも家にも帰らなくなった。帰れなくなったことが本当かも知れない。海浜に近い野原の片隅にトラックを入れるバラック小屋を建て、その横に四畳半の一部屋をこしらえて其処に起き臥し、不自由な自炊をした。初めはがみがみと叱言を云い、中頃には愚痴をこぼしていた女房も、この頃ではなんにも云わなくなった。村に肥料を売りに出かける時折に、家に立ち寄ってみるのであるが、何時行っても女房のとしのは畠に出ているか、藁を打っているか、機を織っているかして働いていた。