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ふんにょうたん

糞尿譚

火野 葦平

線上閱讀火野 葦平《糞尿譚(ふんにょうたん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 51,974 字 · 99 頁

青空文庫

彦太郎は急に胸がどきどきしだし、何かに引っかかって上れなくなったと思い、入って助ける気になってシャツを脱いだ。股引のバンドに手をかけた時、突然池の中でがぼうという大きな音がし、ごうという音といっしょに吸いつけられる勢で水が布を裂くように鳴る音が聞え、水面が渦巻きだしたまん中にぽかりと卯平の顔が出た。ぶるぶると頭を振り、があと唾をはき、くそう、えらい骨を折らしやがった、と云って、右手に持っていた栓を岸の草の上に投げて、きょとんと立っていた彦太郎の顔を見て、声を立てて笑った。土堤の下の方で水の抜けるはげしい音が聞え、眼に見えて水面が下りはじめた。まるで河童じゃな、あんた、と彦太郎が云うのに答えず、卯平は鋭い目附になって注意深く池の中をあちこちと眺め廻した。脱いだシャツをまた着なおして、彦太郎も岸辺の叢などに眼をやった。水すましが慌てたように水面を舞ったり、小さな青蛙が飛んだり、爪の赤い蟹が倉皇として逃げたりしたが、食用蛙の姿は見えなかった。居らんぞ、あんた、と彦太郎が投げ出したように云うのに、卯平は何にもいわず、じっと池の面から眼を離さなかった。彦太郎は退屈して又草の上に腰を下したが、何気なしに横を見上げた途端、彼は飛び上らんばかりに驚いた。