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こうもうけいせい
紅毛傾城
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《紅毛傾城(こうもうけいせい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,403 字 · 50 頁
すでに刻限も夜半に近く、ほどなく海霧も晴れ間を見せようというころ、ラショワ島の岩城は、いまや昏々と眠りたけていた。
見張りの交代もほど間近とみえ、魚油をともす篝の火が、つながり合いひろがり合う霧の中を、のろのろと、異様な波紋を描きながら、上っていくのだった。
すると、それから間もなく、何事が起こったのであろうか、ドドドドンと、けたたましい太鼓の音。それが、海波の哮りを圧して、望楼からとどろき渡った。
「慈悲太郎、どうじゃ。見えるであろうな。あの二楼帆船には、ベットの砲楼が付いているわい。ハハハハ、驚くには当たらぬ、あれが軍船でのうてなんじゃ。魯西亜もこんどこそは怒りおったとみえ、どうやら、火砲を差し向けてきたらしいぞ」
と蘇古根横蔵は撥を据えて、いつも変わることのない、底知れぬ胆力を示した。そして、海気に焼け切った鉤鼻を弟に向けて、髻をゆるやかに揺すぶるのだった。
「だが兄上、私はただ、海波高かれとばかりに祈りおりまする。そして、舷側の砲列が役立たぬようにとな」
火器のない、この島のひ弱い武装を知る弟は、ただただ、迫り来たった海戦におびえるばかりだった。