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「もんしょう」の「わたし」
「紋章」の「私」
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《「紋章」の「私」(「もんしょう」の「わたし」)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,201 字 · 9 頁
自意識過剰の実行力ない男である。之に対照させられてる雁金八郎は恐らく、作者には心理的に縁遠い人物であろう。彼は実際的発明のために悪戦苦闘しながら邁進する。醤油の醸造にかけて特殊の才能をもち、隠元豆から、次には鰹節の煮出殼から、次には魚類から、醤油醸造法を発明し、なお種々の魚の干物をも拵えるが、次から次へと社会的事情による不運に見舞われて、その非凡な発明も報いられない。而も彼は常に敢然として不運と戦っていく。そしてこの二人が、久内の妻の敦子と久内の父の山下博士の学閥とのことで、のっぴきならぬ交渉関係に立たされる。
対蹠的な性格にある二人の人物を作品の中で対立させることは、屡々見られることである。そうした場合、作者はそのどちらかに、同情とか反感とかいった種類の心の動き方ではなく、ただ漠然と心を惹かれることがあるだろう。
「紋章」はその題名によっても知られる通り、代々勤王をもって鳴る名門から出て、貧苦のうちにも国利民福のために、豊富な海産物の利用法として魚醤油の発明に身心をなげうち、学閥の圧迫や其他の社会的不正と戦い、遂に打勝って特許権を得ても、それをすぐ民間に開放してしまって、また次の発明に飛びついていく、そうした雁金八郎のことを書くのが主題だったろう。