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ぶんがくずきのかていから

羅生門・鼻・芋粥

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《羅生門・鼻・芋粥(ぶんがくずきのかていから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,240 字 · 69 頁

青空文庫

ジョオンズは、歌の一節がきれるたびに、うなずいて「グッド」と言った。が何がグッドなのだが、僕にはわからない。

船のほうは、その通り陽気だが、波止場のほうはなかなかそうはいかない。どっちを見ても泣いている人が、大ぜいある。君のおかあさんも、泣いていられた。妹たちも泣いていたらしい。涙は見えなくとも、泣かないばかりの顔は、そこにもここにもある。ことに、フロックコオトに山高帽子をかぶった、年よりの異人が、手をあげて、船の方を招くようなまねをしていたのは、はなはだ小説らしい心もちがした。

「君は泣かないのかい」

僕は、君の弟の肩をたたいて、きいてみた。

「泣くものか。僕は男じゃないか」

さながら、この自明の理を知らない僕をあわれむような調子である。僕はまた、微笑した。

船はだんだん、遠くなった。もう君の顔も見えない。ただ、扇をあげて、時々こっちの万歳に答えるのだけがわかる。

「おい、みんなひなたへ出ようじゃないか。日かげにいると、向こうからこっちが見えない」

久米が、皆をふり返ってこう言った。そこで、皆ひなたへ出た。僕はやはり帽子をあげて立っている。僕のとなりには、ジョオンズが、怪しげなパナマをふっている。