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ぶんがくずきのかていから

羅生門・鼻・芋粥

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《羅生門・鼻・芋粥(ぶんがくずきのかていから)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 31,240 字 · 69 頁

青空文庫

その時はついにそれぎりで、樗牛はえらいともえらくないともつかずにしまったが、ほとんど十年近くも読んだことのない樗牛をまたのぞいてみる気になったのは、全くこの議論のおかげである。

自分はその後まもなく、秋の夜の電灯の下で、書棚のすみから樗牛全集をひっぱり出した。五冊そろえて買った本が、今はたった二冊しかない。あとはおおかた売り飛ばすか、借しなくすかしてしまったのであろう。が、幸いその二冊のうちには、あの「わが袖の記」のはいっている五巻がある。自分はその一冊を紫檀の机の上へ開いて、静かに始めから読んでいた。

むろんそこには、いやみや涙があった。いや、詠歎そのものさえも、すでに時代と交渉がなくなっていたと言ってもさしつかえない。が、それにもかかわらず、あの「わが袖の記」の文章の中にはどこか樗牛という人間を彷彿させるものがあった。そうしてその人間は、迂余曲折をきわめたしちめんどうな辞句の間に、やはり人間らしく苦しんだりもがいたりしていた。だから樗牛は、うそつきだったわけでもなんでもない。ただ中学生だった自分の眼が、この樗牛の裸の姿をつかまえそくなっただけである。