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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁
人もあやしんで立ち止り、隣りあたりの家までも花のようにかおったくらいで、女子供の喜びかたと云ったら、申すまでもありません。妻は勿体なくも、おん肌着などゝ云うものを見るのは生れてこのかた始めてゞすから、これほどの装束を召していらっしゃる方だったら、年もお若かったでしょう、いくつぐらいに見えましたかと尋ねますので、やはり女は女同士、私のような者の妻でもやさしい心根はあるものよと思って、夜目に見たのだからはっきりしないが、よもやまだ二十二三にはおなりになるまい、十八九ぐらいな方だったと申しますと、きっとそうですねと云ったなり物をも云わず飛び出して行くのです。何の用事で出かけたのかしら、と、そう思っていましたら、程へて帰って来まして、まあ、呆れた、そなたは大名の気でいるのですか、とても罪を作る程なら少しでも得のあるようにと心がけて下さればよいものを、わたしは現在屍骸の傍へ行って髪を切り取って来たのです、こんなにふさ/\しているから鬘(註、こゝに云う鬘は髢のこと)にひねったらどんなに見事になるでしょう、常日頃から髪がうすくって困っていましたのに、ほんとうによい