輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ききがきしょう

聞書抄

谷崎 潤一郎

線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁

青空文庫

と云うものであるかも知れぬ。そう思うと娘は始めて哀傷の心が動いた。子として父の最期を憐み、尋常でない死に方をしたのを悲しむ感情が、新たに湧いた。

「お名残は盡きませぬけれど、そういつ迄もこゝに立っていらっしゃいますと、通行の人が訝しみます。お参りが済んだら早うお戻りなされませ、あんまり暗うなりませぬうちに」

外の三人の首に対しても順々に祈りを捧げたあとで、又もう一度父の前へ来てぼんやり彳んでいた時であった、娘は乳母にそう云われたので、

「ばあや、あれはなあに」

と云って、首の傍に立ててある小さな白木の札を指した。実は娘は、さっきからその札に書いてある歌の文句らしいものを、刻々に暗くなって行く鈍いあかりの中で、新月の影にすかしながら読んでいたのである。

治部殿の知行所は石田にて

旱となればみつなりもなし

歌の文句はそういう風に読めるのであったが、それが父の死を嘲ったいたずら者の落書であることは、その時の娘には分らなかった。

「お姫様」

乳母は前からその立て札に気が付いていたのか、娘にそれを読ませまいとするらしく、

「さ、早うお帰りになりませぬと、夜路が恐うござりますぞえ」