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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁
なりすまし、ついでを求めて聚楽へ出仕致すように。そうして関白殿の日常は申すに及ばず、城中の模様に随分と気をつけ、不審の廉があったらば怠らず注進するようにと、そう云うお言葉でござりました」―――順慶はその間の事情を斯く語って、自分は武士と生れたからには戦場の功名をこそ願え、一時の方便にもせよ弓矢を捨てゝ座頭の群に投ずる事は心外であると思ったけれども、「いや/\、戦場の働きは誰にでも出来るが、これはその方でなければ出来ぬ、此の仕事を首尾よくし終せてくれたら、大将の首を五つ六つ取ったよりも大きな手柄であると思うぞ、これこそ無二の忠義であるぞ」と、再三の仰せを否み難く、餘儀ない羽目でお受けしたのだと云っている。そうして豫め主人三成としめし合わせ、或る日の合戦に戦場に於いて行くえ不明になったかの如く取りつくろい、人知れず陣中を脱出して釜山より名護屋に帰り、ついで京都に上ったのであるが、その途中から盲人の真似をし始め、琵琶を背負うて京上りをするめくら法師になり変ったのであると云う。
だが、朝鮮にいた三成が淀君の懐姙のことを知ったのはいつごろであったろうか。秀吉は天正十八年小田原攻めの時にも書を北政所に送って、淀君を陣中に招いているが、今度の出陣にも名護屋の行営へ連れて行ったのである。