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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《聞書抄(ききがきしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,821 字 · 210 頁
世間一般が鳴物を停止しているのに、不謹慎にも聚楽の城中ではさま/″\な宴会を催し、を召して平家を語らせたり、相撲を興行したりした。その外彼の常軌を逸した残忍な行為や婬蕩な振舞について、機敏な三成は逐一報告を受け取っていたので、さてこそ腹心の侍にそう云う密旨を授けたのであろう。
挿絵
挿絵
左衛門尉が京へ上った頃は、何卒淀殿が男子をお生みなされるようにと、方々の寺々で高僧たちがかず/\の大法秘法を修し、就中変成男子の法を盛んに行っている最中であった。按ずるに淀君はそれより五年前、天正十七年五月二十七日に一子鶴松を生んだことがあったが、その子は僅か三歳を以て早世したので、今度のお産に対する太閤の焦心と天下の期待とが大きかったことは察するに足りる。然るに祈祷の効があって若君が誕生されたので、世間は挙って豊臣家の萬歳を唱え、太閤は五十七歳の老齢に達して世継ぎの子を儲けたうれしさの餘り、その顔を見るために名護屋を八月の二十五日に立って、わざ/\大坂へ帰って来た。斯くして三成の心配がだん/\事実となる形勢を生じ、左衛門尉は己れの使命の軽からぬことを胆に銘じたのである。