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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
僕は何のこととも分らない、この親子一緒というのにちょっと心を動かされながら、父の大きな黒いマントで白い病衣のからだを包んで、黙って礼ちゃんのお父さんを盗み見していた。名古屋からどこへも寄らずに、こうして汽車の中を父と二人で黙って通して来た僕には、この会話が多少気になりながらも、発車したあとでそれを父に問いただすことはできなかった。
それから、いよいようちに着いた時にも、やはりそれと関係のあるらしいあることがあった。
「おや、一緒に連れて来なかったんですか。」
僕等の俥が玄関に着いた時、あわてて出て来た母が、父と僕とを見てがっかりしたような風で言った。僕のほかに父が誰を連れて来る筈だったのか、その時には、僕はこれと柏崎でのことを結びつけて考えることができなかった。
しかし、もう事は明白になった。きっと近いうちに礼ちゃんがうちに来るのに違いない。そしてうちからどこかへお嫁に行くのに違いない。僕はそう思うと急に胸がどきどきして来るのを感じた。もう長い間まるで忘れてしまったように思いだしもしなかった、礼ちゃんのことが、わくわくと胸に浮んで来た。そして、どうしてもこれを確かめなければならないような気持になって、飯の時のほかめったに行くこともない母家の母の室へ行った。