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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
になった。そしてその翌年の春頃には、学校で「貧富の懸隔を論ず」などという論文を書いて、自分だけは一ぱしの社会改革家らしい気持になっていた。
――僕ばかりじゃない。さらにその翌年、DとSとがその非戦論のために新聞を出て一週刊新聞(平民新聞)を創めて、新しい社会主義運動を起した時、それに馳せ加わった有為の青年の大部分は、この鉱毒問題から転じて来たものか、あるいはこの問題に刺激されて社会問題に誘いこまれたものであった。
これは谷中村の鉱毒問題について書いたものの中の一断片だ。したがって、勿論その中には嘘はないのだが、多少いっさいを鉱毒問題の方へ傾けすぎた嫌いはある。それを今後は、この行を書いている最中の自由という気持の記憶の方へ、もう少し傾け直さなければならない。その方が、少なくとも今は、本当だと思うのだ。
僕はただ一番安いということだけで万朝報をとった。田舎者でしかも最近数年間は新聞を見るのを厳禁されて、世の中はただ軍隊の生活ばかりのように考えこまされていた僕は、そのほかにどんな名のどんな新聞があるのかも碌には知らなかった。その数年間の世間の出来事についても、僕が今覚えているのは、皇太子(今の天皇)の結婚と星亨の暗殺との二つくらいのものだ。