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じじょでん
自叙伝
大杉 栄
線上閱讀大杉 栄《自叙伝(じじょでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 115,021 字 · 230 頁
それに、もう遅すぎるセルでもちょっと汗ばむほどの、気持のいいぽかぽかする暖かさだった。僕等二人は実際、溶けるような気持になって、その間をぶらぶらと行った。正午にはいったん宿に帰って、こんどはおげんさんを誘って、すぐ前の大きな池のような静かな海の中で舟遊びをした。そしていい加減疲れて、帰って湯にはいって、夕飯を待っていた。
そこへおげんさんがあわててはいって来て、女のお客様だと知らせた。そして僕が立って行こうとすると、おげんさんの後にはもう、神近がさびしそうな微笑をたたえて立っていた。
伊藤はまだ両肌脱いだまま鏡台の前に坐って、髪を結いなおすかどうかしていた。神近の鋭い目がまずその方をさした。
「二、三日中っておっしゃったものだから、私毎日待っていたんだけれど、ちっともいらっしゃらないものだから、きょうホテルまで行って見たの。すると、お留守で、こちらだと言うんでしょう。で、私、その足ですぐこちらへ来たの。野枝さんが御一緒だとはちっとも思わなかったものですから……」
神近は愚痴のようにしかしまた言いわけのように言った。
「寄ろうと思ったんだけれど、ちょっと都合がわるかったものだから……」