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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《花火・来訪者 他十一篇(あぢさい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 52,046 字 · 104 頁
人立ちがしていますから、何気なく立寄って見ると、身投の女だというもあり、斬られて突落されたのだと云うもあり、そうじゃない、心中で、男ばかり飛込み女は巡査につかまったのだと云うもあり、噂はとりどり。訳はさっぱり分りませんが、何やら急に胸さわぎがして来ましたので、急いで家へ帰って見ますと、稽古につかう五行本の上に鉛筆でかいた置手紙。
「急におはなしをしたい事があって来ましたけれど、あいにくお留守で今夜はいそぎますから、お待ち申さずに帰ります。三十日の晩に髪結さんの帰りにまたお寄り申します。おからだ御大事に。君より。」
そのまま息をきって警察署へ馳けつけ様子をきくと、殺されたのは、やっぱり蟲の知らせにたがわず、お君でした。うしろから背中を一突刺されて川の中へのめり落ち、救上げられたものの息はもう切れていました。わたしの懐中にメスが在ったので、申訳ができず、御用になろうという時、派出所の巡査が自首した男だと云って連れて来たのは新内流しの〆蔵だ。その申立によると、〆蔵はお君がわたしと一緒に暮らしていた時分にも、二、三度逢引をした事もあったとやら。殺意を起したわけはわたしの胸と変りは御在ません。