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くさまくら

草枕

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《草枕(くさまくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 84,485 字 · 170 頁

青空文庫

「普段は奥様がおります」

「それじゃ、昨夕、わたしが来る時までここにいたのだね」

「へえ」

「それは御気の毒な事をした。それで大徹さんの所へ何をしに行くのだい」

「知りません」

「それから」

「何でござんす」

「それから、まだほかに何かするのだろう」

「それから、いろいろ……」

「いろいろって、どんな事を」

「知りません」

会話はこれで切れる。飯はようやく了る。膳を引くとき、小女郎が入口の襖を開たら、中庭の栽込みを隔てて、向う二階の欄干に銀杏返しが頬杖を突いて、開化した楊柳観音のように下を見詰めていた。今朝に引き替えて、はなはだ静かな姿である。俯向いて、瞳の働きが、こちらへ通わないから、相好にかほどな変化を来たしたものであろうか。昔の人は人に存するもの眸子より良きはなしと云ったそうだが、なるほど人焉んぞさんや、人間のうちで眼ほど活きている道具はない。寂然と倚る亜字欄の下から、蝶々が二羽寄りつ離れつ舞い上がる。途端にわが部屋の襖はあいたのである。襖の音に、女は卒然と蝶から眼を余の方に転じた。視線は毒矢のごとく空を貫いて、会釈もなく余が眉間に落ちる。はっと思う間に、小女郎が、またはたと襖を立て切った。