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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
線上閱讀永井 荷風《荷風随筆集(上)(かつしかみやげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 頁
ヴィヨロンの音と共に、流行唄が聞え出す。蜜豆屋がガラス皿を窓へ運んでいる。茹玉子林檎バナナを手車に載せ、後から押してくるものもある。物売や車の通るところは、この別天地では目貫きの大通であるらしい。こういう処には、衝立のような板が立ててあって、さし向いの家の窓と窓とが、互に見えないようにしてある。
わたくしは路地を右へ曲ったり、左へ折れたり、ひや合いを抜けたり、軒の下をくぐったり、足の向くまま歩いて行く中、一度通った処へまた出たものと見えて、「あら、浮気者。」「知ってますよ。さっきの旦那。」などと言われた。忽ち真暗な広い道のほとりに出た。もと鉄道線路の敷地であったと見え、枕木を掘除いた跡があって、ところどころに水が溜っている。両側とも板塀が立っていて、その後の人家はやはり同じような路地の世界をつくっているものらしい。
線路址の空地が真直に闇をなした彼方のはずれには、往復する自動車の灯が見えた。わたくしは先刻茶を飲んだ家の女に教えられた改正道路というのを思返して、板塀に沿うて其方へ行って見ると、近年東京の町端れのいずこにも開かれている広い一直線の道路が走っていて、その片側に並んだ夜店の納簾と人通りとで、歩道は歩きにくいほど賑かである。