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きくちよしょう

菊千代抄

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《菊千代抄(きくちよしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 36,178 字 · 72 頁

青空文庫

貞良は眉をひそめた。どこか痛みでもするように、……それから、分封のことは異議はないけれども、男でいるかどうかは早急にきめる必要はあるまい、なおよく考えてみるようにと云って、父は帰っていった。

幕府のほうにはどういう形式をとったかはわからないが、四月から巻野家の世子は亀千代に定り、中屋敷でかなり盛大な披露の宴があった。……菊千代はそのとき初めて弟を見た。まだ百日に足らない赤児で、髪毛の濃いのと、よく肥えていたということくらいしか覚えがない。それが弟を見た初めであり、そして終りであった。

それから菊千代は再び以前の生活に戻った。学問もし、弓や薙刀の稽古もし、馬にも乗った。半三郎がいなくなったほか、まわりはみな元の者たちばかりで、菊千代の秘密については誰も知らないらしかったが、半三郎がせいばいされたということで、一種の警戒と隔てができ、まえのようにうちとけた感じはなくなってしまった。

――かれらは怖れているのだ、それだけなのだ、気にする必要はない。

こう思ったけれども、隔てのできたかれらのようすが、ときに激しく癇に障り、ついするとどなりつけ、罵り、またしばしば鞭をあげるようなことさえあった。