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はなばなしきしゅんかん
華々しき瞬間
久坂 葉子
線上閱讀久坂 葉子《華々しき瞬間(はなばなしきしゅんかん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 45,114 字 · 92 頁
「女史は何が出来るんですか」
「わたくし? パントマイム」
男は笑った。南原杉子は男を笑わせたことをひどく面白がった。何故なら、この男と二三度会っていながら一度も男の笑いをみたことがなかったからだ。
仁科六郎。彼は、放送会社につとめている。南原杉子は、仕事のことで、彼と事務的な会話をしただけである。
「ここの喫茶店、よく来られるのですか」
「たびたび。でもママさんとは話をしたことがないのよ」
「御紹介しましょうか」
「(興味ある? ありそうね)どうぞ」
丁度、マダムが出て来た。上々の機嫌である。そこで、あたり前の紹介が行われた。
南原杉子。仁科六郎。蓬莱和子。偶然、予期しなかったところに大きなつながりが生れてしまうことはよくあるものだ。その場合、過去になってから、発生の時のことなど別に問題ではない。何ごとでも、ごくありふれたつまらないところから出発するものだ。
その日の三人はそれで終った。南原杉子は、珈琲代をハンドバッグにしまいこんでカレワラを出た。彼女の意識の上には、すでに、仁科六郎と蓬莱和子の存在はなかった。いつも巻上髪をしているのに、今日は長くたらしていた。