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らくご・きょうそれつでん

落語・教祖列伝

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《落語・教祖列伝(らくご・きょうそれつでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 14,667 字 · 30 頁

青空文庫

手もとを一廻転したナギナタは同時に後方の敵を十五人なぎ倒し、前方では同じ数の敵の首をコロコロと打ち落している。左へ走り右へ廻り、林をとび、伽藍をこえ、あたかも千本の矢が入りみだれて走っているように叡山を縦横にはせめぐって寄せくる敵をバッタバッタと斬り払ったが、ついに、根本中堂をとりかこむ広場は首と胴を二ツにはなれた敵の屍体でうずまって、石も土も見ることができなくなり、足の踏み場がなくなったから仕方がない。もはやこれまでと谷を渡って、落ちのびた。山伏に姿を変えて諸国をまわり、この山奥の手長神社に住みつくことになった。

しかし、日本中の史書や軍書をひもといても、調多羅坊はでてこない。それどころか、とにかく一人の山法師がナギナタをとって抵抗して、信長勢を三人ぐらいは斬り伏せたというような武勇譚も歴史に残っていないのである。インチキ軍記や講談にも存在しない。しかし、この村には実在している歴史であるし、それを否定する鑑定機械はどこにも実在しないのである。

調多羅坊はこの村に落ちついてから、ツラツラ天下の歴史にてらし乱世の有様をふりかえッて悟りをひらいた。ツラツラ乱世の原因をたずぬるに、実に野郎が武器をいじくるのがよろしくない。