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らくご・きょうそれつでん
落語・教祖列伝
線上閱讀坂口 安吾《落語・教祖列伝(らくご・きょうそれつでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,807 字 · 28 頁
「アッ。そうだ。オイ。一ッ走り、ミソ漬のムスビをこしらえて、持ってこい」
こういうわけで、カメは家老にしたがって、殿様の前へつれて行かれた。
★
家来に武芸者は多いが、水泳の指南番は観海流の扇谷十兵衛という初老の達人が一人であった。とは云え、こんな小藩で水錬の指南番を召抱えているのは珍しい。
殿様は源左から話をきいて、大そうよろこんだ。
「扇谷十兵衛をよべ。阿賀ノ川へ遠乗いたすから用意いたせ」
気の早い殿様である。
源左、十兵衛、カメ、その他数名の者をひきつれて、さっそく川岸へ到着した。
殿様は十兵衛に命じて、
「カメの手錬をためしてみよ」
「ハッ」
そこで十兵衛はカメをよんで、
「殿の御前に技を披露いたすのは末代までの名誉であるから、心して、充分にやるがよい。向う岸まで泳いで戻って参れ」
「行って戻ってくるのかね」
「そうだ」
「一息はダメだ」
「どうしてダメだ」
「あんた、一息で行って戻ってくるかね」
「一息で行って戻ってこいとは言わんぞ。なんべん息をしてもいい」
「そう何べんもできないもんだ。一々面倒だからね。向うの岸へついて、いっぺん息を吸う」