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あしはみていた
葦は見ていた
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《葦は見ていた(あしはみていた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,985 字 · 36 頁
――あたしが悪いのよ、あたしがあなたをこんなにしてしまったのよ、ごめんなさい、堪忍して、堪忍して。
おひさは身悶えをし、声をあげて泣くのであった。計之介はそれをやめさせようとし、ときにしばしば女の口を塞いでどなりさえした。
――やめろ、やめてくれ、こうなったのは誰の責任でもない、もしなにが悪いかというなら、それは二人がめぐりあったことだ。
――それだけは仰しゃらないで。
――悪いとすればそのことだというんだ。
――あなたは情なしよ。
――おまえが自分を責めすぎるからだ。
――あなたは薄情者よ、あたしはそのことをどんなに有難く思っているかしれないのに。
おひさは云った。
――あたしは自分がどうなってもいい、あなたとめぐりあえたことがあたしにはうれしい、あたしにはそれがなにより有難いことだわ。
そして女は絶えいるように泣いた。
これらのことは計之介は話さなかった。お互いの身も心も灼きつくすような日夜のことは、話しようもなかったし、話す必要もなかったからである。……生活はまったくその日ぐらしになった。計之介は家じゅうの物を売った。女は着たきりで、髪道具も持っていなかった。