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あざみ
薊
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《薊(あざみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 15,800 字 · 32 頁
この二つのことがずっと胸につかえていた。そして明くる年、殿に参覲のいとまが出て帰国する途中、再びおうたとそういうことになった。おれはあやまちを繰り返したくなかったので、浜松では宿直をするつもりだったが、殆んどもの狂おしいようなおうたの誘いに抗しきれず、夜半になって隠居所で逢った。
おれは生れて初めて、充実した陶酔を味わった。まえのときには圧倒され、たじろいだものが、二度めのそのときには激しいよろこびのとなった。おうたの全身はおれを包み、譬えようもない微妙さでなみうち痙攣した。おうたのからだは頭から手足の爪先まで、一分の隙もなく活き活きとうごめき揺れ、吸着しひきつりのけぞった。いまでも、そのときの触感はおれの肌に残っている、と銕太郎は思った。それからあの呼吸と声だ。火のように熱い、とぎれとぎれの呼吸と、そのままでは意味をなさない告知の叫び。あれもおれの初めて経験したものだし、おれを強烈な陶酔にひきいれたことも忘れられない、銕太郎はそう思いながら妻のほうを見た。
「人にはそれぞれ癖があるものです」とゆきをは化粧する手を休めずに云った、「との方でもそうでございましょう」