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とうそんのぶんがくにうつるしぜん

藤村の文学にうつる自然

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《藤村の文学にうつる自然(とうそんのぶんがくにうつるしぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,118 字 · 12 頁

青空文庫

バイロンはイタリーの海で生命を終ったが、彼の生命の本質は彼のロマンティストとしての英雄の憧れ、自由への飛翔の間に終った。日本へ渡ったロマンティシズムの文芸思潮が、いかなる形で過去の日本文学の遺産ととけ合い、変質したかということの一つの実例として藤村の詩は見直される意味がある。

藤村が、近年次第に自然について教訓的にものを云いはじめていることは、私共の注意をひく。「樹木の言葉」などにも、はっきりそのことは感じられる。人生の幾波瀾を経て、困難多岐な社会生活を観察して今日に至った老芸術家が、自然に向かってもその青春時代のようにその花の色、濃い緑、枝もたわわな実の美しさだけに目をうばわれず、寧ろ、日夜を貫いて営まれている生命の流れ、その多様な変貌、永遠性などを感じるのは当然のことであろう。花の咲き乱れた樹より、冬枯れの梢の枝の美しさを愛し、そこに秘められている若さを鋭く感じる老境の敏感さは、私共にやはり同感されるものである。しかし、自然を教訓的に語るということには、やはり芸術家を戒心せしめる要素がある。

若い日のゲーテは、あのように活々と瑞々しく自然を感覚的に詩化した。