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とらのきば

虎の牙/透明怪人

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《虎の牙/透明怪人(とらのきば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。

N3 · 進階 · 新字新假名 · 193,761 字 · 388 頁

青空文庫

「ぼくはすこしも知らなかった。しかし、ぼくにあわせないように、あのビルのどこかへ、とじこめたのかもしれない。いそいでくれたまえ。文代をたすけださなければならない。」

明智は、さきに立って、警察署の玄関へ、かけだしていきました。

それから十分とたたないうちに、署長と中村係長にひきいられた警官隊が、焼けビルの中へ、ふみこんでいました。明智探偵は案内役として、まっさきにすすんでいます。

警官たちが、手に手にふり照らす懐中電灯の光が、小さな探照灯のように、まっくらな洋館のすみずみを、あかるくしました。しかし、人かげはもちろん、道具らしいものもない。空屋のような部屋ばかりです。

一階から二階、三階と、くまなくさがしまわりましたが、何もありません。だれもいません。三階建ての大きなビルの中は、まったくからっぽになっていました。すばやい怪老人とそのなかまは、このすみかをすてて、どこともしれず、すがたをくらましてしまったのです。

もうさがすところもないので、警官隊は一階におりてきました。明智はやはり、そのせんとうに立って、まっくらな廊下を、あるいていましたが、とつぜん、ふっと立ちどまって、まえのくらやみを、じっとみつめたかと思うと、やにわに、そのほうにむかって、かけだしました。