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ぐびじんそう
虞美人草
線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁
これが復讐である。
我の女はいざと云う間際まで心細い顔をせぬ。恨むと云うは頼る人に見替られた時に云う。侮に対する適当な言葉は怒である。無念と嫉妬を交ぜ合せた怒である。文明の淑女は人を馬鹿にするを第一義とする。人に馬鹿にされるのを死に優る不面目と思う。小野さんはたしかに淑女を辱しめた。
愛は信仰より成る。信仰は二つの神を念ずるを許さぬ。愛せらるべき、わが資格に、帰依の頭を下げながら、二心の背を軽薄の街に向けて、何の社の鈴を鳴らす。牛頭、馬骨、祭るは人の勝手である。ただ小野さんは勝手な神に恋の御賽銭を投げて、波か字かの辻占を見てはならぬ。小野さんは、この黒い眼から早速に放つ、見えぬ光りに、空かけて織りなした無紋の網に引き掛った餌食である。外へはやられぬ。神聖なる玩具として生涯大事にせねばならぬ。
神聖とは自分一人が玩具にして、外の人には指もささせぬと云う意味である。昨夕から小野さんは神聖でなくなった。それのみか向うでこっちを玩具にしているかも知れぬ。――肱を持たして、俯向くままの藤尾の眉が活きて来る。
玩具にされたのならこのままでは置かぬ。我は愛を八つ裂にする。