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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁

青空文庫

「出るなんて、まあ。――出るにしても、もっと緩外したら宜さそうなもんじゃないか」

「悪いですか」

「悪くはないよ。御前が欲しければ持って行くが、いいけれども。何もそんなに急がなくっても好いんだろう」

「だって今外さなくっちゃ、時間がありません」

母は変な顔をして呆然として立った。欽吾は両手を額に掛ける。

「出るって、御前本当に出る気なのかい」

「出る気です」

欽吾は後ろ向に答えた。

「いつ」

「これから、出るんです」

欽吾は両手で一度上へ揺り上げた額を、折釘から外して、下へさげた。細い糸一本で額は壁とつながっている。手を放すと、糸が切れて落ちそうだ。両手で恭しく捧げたままである。母は下から云う。

「こんな雨の降るのに」

「雨が降っても構わないです」

「せめて藤尾に暇乞でもして行ってやっておくれな」

「藤尾はいないでしょう」

「だから待っておくれと云うのだあね。藪から棒に出るなんて、御母さんを困らせるようなもんじゃないか」

「困らせるつもりじゃありません」

「御前がその気でなくっても、世間と云うものがあります。出るなら出るようにして出てくれないと、御母さんが恥を掻きます」

「世間が……」