輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ぐびじんそう
虞美人草
線上閱讀夏目 漱石《虞美人草(ぐびじんそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 198,559 字 · 401 頁
この寒い所をやっとの思いで斬り抜けた昨日今日、寒い所から、寒いものが追っ懸けて来る。今まではただ忘れればよかった。未来の発展の暖く鮮やかなるうちに、己れを捲き込んで、一歩でも過去を遠退けばそれで済んだ。生きている過去も、死んだ過去のうちに静かに鏤られて、動くかとは掛念しながらも、まず大丈夫だろうと、その日、その日に立ち退いては、顧みるパノラマの長く連なるだけで、一点も動かぬに胸を撫でていた。ところが、昔しながらとたかを括って、過去の管を今さら覗いて見ると――動くものがある。われは過去を棄てんとしつつあるに、過去はわれに近づいて来る。逼って来る。静かなる前後と枯れ尽したる左右を乗り超えて、暗夜を照らす提灯の火のごとく揺れて来る、動いてくる。小野さんは部屋の中を廻り始めた。
自然は自然を用い尽さぬ。極まらんとする前に何事か起る。単調は自然の敵である。小野さんが部屋の中を廻り始めて半分と立たぬうちに、障子から下女の首が出た。
「御客様」と笑いながら云う。なぜ笑うのか要領を得ぬ。御早うと云っては笑い、御帰んなさいと云っては笑い、御飯ですと云っては笑う。人を見て妄りに笑うものは必ず人に求むるところのある証拠である。