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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血ぬられた懐刀(ちぬられたかいとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 頁

青空文庫

某必ずお紅殿を、無垢の処女として聚楽第から、貴殿にお返し致しましょう、安心して一先ずお引き取り下され、……四人の武士を討たれたことも、某秘密に取り行ない、貴殿にご迷惑のかからぬよう、葬むることにいたしましょう」

こう云われてみれば秋安には、押して云うべきことはなかった。なるほど主殿へ切り入ったならば、討って取られることであろう。決死の覚悟で来たのではあったが、殺されるのを望んでいるのではない。それにお紅を処女のままで、返してくれるというのである。苦情を云うべき筋はない。しかも言葉を誓ったのは、他ならぬ木村常陸介である。充分に信頼してよかった。

で、ひき上げることにした。

「ご芳志忝けのう存じます。ではお言葉に従いまして、立ち返ることにいたしましょう。つきましてはきっとお紅殿を……」

「大丈夫でござる、お案じなさるな」

「は」と恭しく一礼して、木立をくぐって北畠秋安は、忍びやかに後へ引き返した。

しかし十足とは歩かない中に、一つの恐ろしい事件が起こった。

酒宴をひらいている主殿の樓の、明るい華やかな笑声を縫って、悲痛極まる女の声が、一声けたたましく聞こえたかと思うと、一所の襖が仆されて、女の姿がよろめき出たが、欄干へ体をもたせかけると、そのままグッタリと動かなくなり、つづいて何物かが女の手から、秋安の足許へ投げ