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ちぬられたかいとう

血ぬられた懐刀

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《血ぬられた懐刀(ちぬられたかいとう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 35,586 字 · 71 頁

青空文庫

あれ! というように声を上げて、千浪が立って逃げ出したところを、飛びかかって秀次は小脇に抱いた。

「もがけもがけ、あばれろあばれろ、そのつどお前の軟かい肌が、俺の体へぶつかるばかりだ! 小鳥よ、捕らえた! 可愛い色鳥!」

ズルズルと引き立てて行こうとした。

その秀次の両の足を、しっかりと抱いた者があった。やはり葛葉の方である。

冷やかに秀次は睨んだが、

「嫉妬か!」

「上様!」

「邪魔をするか!」

「はなしておやり遊ばしませ」

「其方こそ放せ! 手を放せ!」

「上様、お慈悲にござります」

「ふん」といかにも憎々しく、秀次は鼻を鳴らしたが

「先刻自害をした女のように其方も自害をしたいそうな」

「いっそお手にかけて下さりませ」

「望みか!」と云うと秀次は、ドンと片足を持ち上げたが、ウンとばかりに蹴仆した。

と、悶絶をする声がした、胸を蹴られた葛葉の方は裾を乱して伏し転んだ。

一瞬間のざわめきの起こったのは、座に侍っていた妻妾や近習が、一時に動揺したからであった。その動揺が静まると、反動的の静けさが、大広間一杯に拡がった。

「今夜はこれで二人死んだ。おそらくまだまだ殺されるだろう。